コラム / 感染症

【小児科医が解説】子どもの感染性胃腸炎〜原因ウイルスと症状、脱水症の対策〜

【小児科医が解説】子どもの感染性胃腸炎〜原因ウイルスと症状、脱水症の対策〜

冬から春先にかけて流行する「感染性胃腸炎」。子どもが突然激しく吐き出したり、何度も下痢を繰り返したりすると、保護者の方はとても心配になりますよね。子どもは大人に比べて体に蓄えられる水分の割合が少なく、容易に「脱水症」に陥りやすいという特徴があります。今回は、感染性胃腸炎を引き起こす主な原因ウイルスとそれぞれの特徴、現れる症状の経過、そして最も注意すべき脱水症の見極めとホームケアについて詳しく解説します。

感染性胃腸炎の主な原因ウイルスと特徴

子どもの感染性胃腸炎の多くは、ウイルスが口から体内に入り込むことで起こります(ウイルス性胃腸炎)。代表的な原因ウイルスには以下のようなものがあります。

ウイルス名 主な流行時期 特徴・主な症状
ノロウイルス 11月〜2月(冬) 感染力が極めて強く、突然の激しい嘔吐で始まります。下痢や軽度の発熱を伴うこともあります。
ロタウイルス 3月〜5月(春) 乳幼児に多く、米のとぎ汁のような白い下痢便と高熱、激しい嘔吐が特徴です。※現在はロタウイルスワクチンの定期接種化により、重症化するお子さんは大幅に減っています。
アデノウイルス 通年(夏にやや多い) お腹の風邪(胃腸炎症状)のほか、発熱やのどの痛み、結膜炎などを伴うこともあります。症状が長引きやすい特徴があります。
ハマッココ

突然吐き始めちゃってびっくりしたよ。これからどんな風に症状が進んでいくのかな?

感染性胃腸炎の症状と経過の目安

ウイルス性胃腸炎の多くは、以下のような典型的な経過をたどります。

  1. 初期(1日目):突然の嘔吐
    何の前触れもなく突然吐き始め、半日〜1日の間に何度も繰り返し吐くことが多いです。この時期が最も吐き気が強く、水分も受け付けにくい状態になります。
  2. 中期(2〜3日目):下痢と発熱
    吐き気が徐々に落ち着いてくると、入れ替わるように水のような下痢が始まります。ウイルスを体外へ排出しようとする生体反応であるため、無理に下痢止めで止めないことが基本です。また、38度前後の発熱や腹痛を伴うこともあります。
  3. 回復期(4〜7日目):徐々に回復
    下痢の回数が減り、便の硬さが戻ってきます。食欲も徐々に回復していきます。

なぜ子どもは脱水症になりやすいの?

感染性胃腸炎で最も警戒しなければならないのが「脱水症」です。子どもは以下の理由から、大人よりもずっと早く脱水が進行します。

  • 体の水分割合が高い:大人の体水分率が約60%であるのに対し、乳幼児は体の約70〜80%が水分でできています。そのため、少しの水分喪失でも体に大きな影響を及ぼします。
  • 水分の出入りが激しい:代謝が活発で、呼吸や皮膚から自然に失われる水分(不感蒸泄)の割合が大人より多いです。
  • 尿での調整能力が未熟:腎臓の機能がまだ十分に発達していないため、尿の量を細かく調節して体内の水分を保つことが苦手です。
  • 自分で訴えられない:特に赤ちゃんや小さなお子さんは、喉の渇きや体調不良を言葉で伝えることができません。
ナースさん

お家で見守る時は、脱水のサインを早く見つけてあげることが大切ですね。どんなポイントに気をつければ良いでしょうか?

見逃さないで!脱水症の警戒サイン

お子さんの様子を観察し、以下の症状がないかこまめにチェックしてください。当てはまるものがある場合は脱水症が疑われます。

軽度〜中等度の脱水サイン(受診を推奨)

  • おしっこの回数が減っている、または半日以上おしっこが出ていない
  • 泣いているのに涙が出ない、または涙の量が明らかに少ない
  • 口の中や唇が乾いてカサカサしている
  • 目が少し窪んでいるように見える
  • なんとなく元気がなく、機嫌が悪い

重度の脱水サイン(至急受診が必要)

  • 呼びかけても反応が鈍い、ウトウトして寝てばかりいる(意識障害)
  • ぐったりして全く起き上がれない
  • 皮膚や手足が冷たく、血色が悪い
  • 呼吸がハァハァと荒い

おうちでの正しい水分補給とホームケア

脱水症を防ぐためのホームケアの基本は、失われた水分と電解質(塩分など)を適切に補うことです。

1. 吐いた直後は胃を休める

吐いた直後は胃が激しく波打っている状態です。慌てて水分を飲ませると、その刺激でさらに吐いてしまい、かえって脱水を進行させます。まずは30分〜1時間程度は何も与えず、横にして様子を見ましょう。

2. 経口補水液を少量ずつ与える

吐き気が少し落ち着いたら、水や麦茶ではなく、体への吸収が早い「経口補水液(OS-1やアクアライトなど)」を飲ませます。ポイントは、「スプーン1杯(約5ml)程度を10〜15分おきに与える」ことです。一気にゴクゴク飲ませると再び吐いてしまうため、焦らず少しずつ浸透させるように与えてください。具体的な進め方は、コラム「経口補水法(ORT)について:進め方と注意点」をご覧ください。

小児科を受診する目安

感染性胃腸炎は、安静と適切な水分補給で数日以内に軽快することがほとんどですが、以下のような場合は速やかに小児科を受診してください。

  • 上記の脱水サインが見られるとき
  • 半日以上水分を全く受け付けず、何回も繰り返し吐いてしまうとき
  • 激しい腹痛が続いたり、高熱が数日下がらないとき
  • 便に血が混じっているとき(細菌性胃腸炎の可能性があります)

当クリニックでは、小児科専門医がお子さんの脱水の程度を正確に見極め、必要に応じて点滴治療や、吐き気を抑える漢方薬(五苓散など)の処方、アドバイスを行っております。おうちでの水分補給に不安がある場合や、受診のタイミングに迷われた際は、遠慮なくご相談ください。

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