小児の溶連菌感染症について詳しく解説いたします。溶連菌感染症は子供たちによく見られる感染症の一つであり、その症状、診断、治療、予防について分かりやすく説明いたします。
目次
溶連菌感染症とは
小児の溶連菌感染症は、主に咽頭部位で起こる感染症の一つです。この病気の主要な原因菌は、A群β溶連菌(Streptococcus pyogenes)と呼ばれる細菌です。この細菌がのどや扁桃腺に感染し、炎症を引き起こします。
感染は、空気中の飛沫や接触によって広がります。特に子供たちの間で感染が多く見られ、幼少期から思春期にかけての発症が一般的です。感染が広がるリスクを軽減するために、手洗い、咳エチケット、感染者との接触を避けることが重要です。
症状としては、のどの痛み、発熱、咳、扁桃腺の腫れ、口内に白い膿のようなもの(白苔)が見られることがあります。これらの症状が現れた場合、早期の診断と治療が重要です。溶連菌感染症は、適切な抗生物質治療によって効果的に治療できます。感染拡大を防ぐために、感染者との接触を避け、咳やくしゃみの際にはマスクやティッシュを使用することも忘れずに行いましょう。
症状と診断
主な症状:
- 喉の痛み: 溶連菌感染症の初期症状の一つとして、激しい喉の痛みが現れます。のどが赤くなり、飲み込みが痛いことがあります。
- 発熱: 発熱は一般的な症状であり、体温が上昇します。発熱は通常、38度以上に上がることがあります。
- 扁桃腺の腫れ: 咽頭にある扁桃腺が腫れることがあり、口内に白い膿のようなもの(白苔)が見られることもあります。これらの症状は、のどの痛みと一緒に現れることがよくあります。
合併症:
溶連菌感染症の合併症として、以下の二つがあります。
- 溶連菌感染後急性糸球体腎炎: 溶連菌感染1~4週間後に腎臓の糸球体に炎症が起こり、腎機能に影響を及ぼすことがあります。主な症状には浮腫(むくみ)、血尿があります。
- リウマチ熱: リウマチ熱は、感染後に発症する可能性がある合併症で、心臓、関節、皮膚などに炎症を引き起こします。主な症状には高熱、関節痛、心臓弁の損傷が含まれます。
診断方法:
- 身体検査: のど、扁桃腺、頸部リンパ節を検査し、腫れや炎症を確認します。
- 咽頭検体採取: のどから検体を採取し、抗原検査キットで細菌の存在を確認します。これにより、溶連菌感染の診断が確定します。
- 血液検査: 血液中の白血球数やC反応性蛋白(CRP)のレベルを調べ、感染の程度を評価するのに役立ちます。
早期の診断と適切な治療が溶連菌感染症の合併症のリスクを軽減するために重要です。次の章では、溶連菌感染症の治療について詳しく説明します。
治療法
小児の溶連菌感染症の治療には、適切な抗生物質の使用が主要な方法です。以下に、治療に関する詳細を説明します。
- 抗生物質治療: 溶連菌感染症は、通常、抗生物質によって効果的に治療できます。感染の程度に応じて適切な抗生物質を服用する必要があります。抗生物質を正しく使用することで、細菌の増殖を抑え、症状の改善が期待できます。
- 安静と水分補給: 病気の間、患者は安静にし、十分な水分を摂ることが推奨されます。のどの痛みや発熱により、食事が難しい場合でも、水分を十分に摂ることで脱水を防ぐことができます。
- 症状の管理: 症状の緩和には、痛みを和らげるための痛み止めや、発熱を下げるための解熱剤が使用されることがあります。
小児の溶連菌感染症の治療は、抗生物質と症状の管理に基づいて行われます。感染を早期に診断し、適切な治療を受けることが大切です。次の章では、感染の予防策について詳しく説明します。
予防策
小児の溶連菌感染症を予防するためには、以下の予防策を遵守することが大切です。
- 手洗いと衛生: 子供たちに、こまめな手洗いを習慣づけることが重要です。石けんと水でしっかりと手を洗い、感染を防ぎましょう。また、咳やくしゃみをする際には、ティッシュや肘を使って口を覆うことで、飛沫感染を防ぐことができます。
- 感染者との接触を避ける: 感染者との接触を最小限に抑えることが感染拡大のリスクを減らす手段です。特に感染が広がりやすい状況での接触を避けるよう心掛けましょう。
- 家族内での感染拡大を防ぐ: 家庭内での感染拡大を防ぐために、感染者の使用物品を分けることや、感染者の隔離を検討しましょう。家族が同じ部屋で寝る場合には、換気を良くし、感染リスクを軽減することが大切です。
- 早期の診断と治療: 症状が現れた場合、早期に医師の診察を受け、適切な治療を開始しましょう。感染の拡大を防ぐためにも、感染者が他の人と接触しないよう留意しましょう。
小児の溶連菌感染症は、感染予防に努めることで制御できる病気です。感染拡大を防ぎ、子供たちの健康を守るために、予防策を実施しましょう。また、症状が現れた際には、迅速な診断と治療を受けることが大切です。
まとめ
小児の溶連菌感染症は、咽頭部位で起こる感染症で、喉の痛みや発熱などの症状が特徴です。早期の診断と適切な治療が大切で、抗生物質治療が主要な方法です。また、合併症として「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」と「リウマチ熱」に注意が必要です。
予防策として、手洗いや衛生習慣の重要性、感染者との接触を避けること、予防接種の実施などが挙げられます。家庭内での感染拡大を防ぎ、感染症に対する免疫力を高める努力も重要です。子供たちの健康を守るために、早期の対応と予防を心掛けましょう。
この記事を書いた医師
望月 優暁
Masaaki Mochizuki
日本小児科学会 小児科専門医
はまっここどもクリニック 院長
2015年横浜市立大学医学部医学科卒業、横浜市立市民病院、藤沢市民病院、横浜市立大学附属病院、静岡県立こども病院等で小児医療に携わり、2023年に横浜市都筑区に「はまっここどもクリニック」を開院。