軽度から中等度のこどもの胃腸炎に対して、経口補水液(ORS)での水分補給による治療は世界標準となっています。経口補水法(ORT)について進め方や注意点をみていきましょう。
目次
経口補水法(ORT)とは
脱水症のための経口による補水のために作られた飲料を経口補水液(ORS)と呼びます。代表的な経口補水液(ORS)には、OS-1©があります。
スポーツドリンクよりも電解質(ミネラル)の濃度が高く、また水と電解質の吸収を速めるために、スポーツドリンクと比べて糖濃度は低い組成となっています。
成分 | ナトリウム (mEq/L) | カリウム (mEq/L) | クロール (mEq/L) | 糖(%) |
OS-1© | 50 | 20 | 50 | 2.5【1.8】 |
スポーツドリンク | 9〜23 | 3〜5 | 5〜18 | 6〜10 |
ミネラルウォーター | 0.04〜4.04 | 0.04〜4.04 |
ミネラルウォーターなどの水分をとることも脱水に対して治療にはなりますが、食事が取れていない状態で水やお茶等の摂取だけだと糖が入っていないため、低血糖になるリスクがあります。スポーツドリンクは糖が入っており、ミネラル(NaやKなど)も含まれています。
OS-1は味が少し苦手だ。。。
OS-1©を飲めるのであれば、ベストな経口補水が期待できます。ただ味が苦手という声もよく聞かれます。
- 脱水症のときは、いつもよりおいしく感じる可能性があります。
- 液体タイプだけでなく、ゼリータイプもあります。液体タイプが苦手でもゼリータイプなら飲める可能性があります。
まずは元気なときに味が苦手だったとしても、OS-1©等の経口補水液(ORS)を試してみてください。それでも味が苦手などで飲めない場合は、スポーツドリンクも検討してもよいと思います(糖濃度が高めなので過剰摂取に注意してください。)。
経口補水法(ORT)の進め方
嘔吐に対して経口補水法(ORT)を行う場合、5mlの経口補水液(ORS)を5分ごとに与えます。
ペットボトルのキャップは並々いれると7ml少しほどなので、ペットボトルのキャップのほどほどのところが5mlの目安です。
様子を見て大丈夫そうなら投与の間隔を狭くしたり1回量を多くします。
もし途中で吐いちゃったらどうするの??何時間か休憩したほうがいいの?
嘔吐してしまった場合でも飲ませ続けて問題ありません。5mlを5分ほどに戻して再開してください。何時間も待つ必要はありません。
学童〜成人 (高齢者含む) | 500〜1000mL/日 |
幼児 | 300〜600mL/日 |
乳児 | 体重1kg当たり30〜50mL/日 |
経口補水液の増量のしかた
5分ごとに5mlぐらいでスタートするのはわかったけど、どれくらいまで増やしていけばいいのかな
体重 | 5分ごとの量 | 1時間量 | 4時間量 |
10kgまで | 10〜20ml | 120〜240ml | 480〜960ml |
20kgまで | 15〜30ml | 180〜360ml | 720〜1440ml |
30kgまで | 20〜40ml | 240〜480ml | 960〜1920ml |
例えば、吐いていて飲めてない子に経口補水をスタートする場合、はじめは5mlずつを5分ごとで始めます。10kgまでの小さい子の場合は、5分ごと5ml→5分ごと7ml→5mlごと10mlと目標の量に増やしていきます。
もしも吐いてしまった場合は、5分ごとに5mlに戻して再スタートを行います。何時間も絶飲食にする必要はありません。
その他の注意点
- 母乳栄養の場合は、母乳栄養を継続してください。ORSを与えていても、母乳を併用したほうがいいとされています。
- ミルク栄養や混合栄養の場合、胃腸炎だからといってミルクは希釈せずにいつもの量で与えてください。
- 経口補水液(ORS)によって脱水が補正されれば、ミルクや食事も早期に再開して大丈夫です。むしろ長時間の食事制限は推奨されていません。
まとめ
経口補水法(ORT)は、経口補水液による脱水を補正する治療であり、世界的な標準治療となっています。ゆっくりと無理のない積み重ねることで医療機関で点滴される以上の量を摂取できるかもしれません。
一方で、高度の脱水があったり、胃腸炎そのものの病勢(病気の強さ、勢い)が強いため、正しい経口補水法に則っても、うまく摂取できない場合があります。うまく飲水できないようなら無理をせず、最寄りの医療機関に相談するようにしてください。