この記事では、子供たちのお腹の痛みについてお話しします。お子さんがお腹の痛みを感じることは、親御さんにとって心配ごとですよね。この記事では、痛みの原因やどうやって対処できるかを分かりやすく説明します。お腹の痛みは、いろんな理由から起こることがあります。正しい情報を知ることは、早く痛みを和らげるお手伝いになります。
目次
胃腸炎
嘔吐や腹痛の原因として最多です。嘔吐・腹痛・下痢の3つが揃っていればほとんどの場合胃腸炎です。
原因はウイルスのことが多く、それに対する特効薬はありません。整腸剤を飲むと、いくらか治りが早くなるかもしれないと言われています。基本的には経口補水液を無理せず少量ずつ摂取することで脱水を防ぎながら自分の力で治癒していくのを待つことになります。まったく飲めない、飲んでもすぐ吐いてしまうことが続くなどがあれば、点滴による補液を考慮します。
お腹が痛いときはどうすればいいの?
腸管の痛みに対してはカロナール(アセトアミノフェン)は効かないことが多いです。自分の力で治癒していくのを、水分を補いながら待つことになります。ブスコパン(ブチルスコポラミン臭化物)というお薬が効くことがあります
お腹をあたためるのもいいかもしれないわね!
便秘症
最近便が硬い、少ししか出ない、ご飯を食べたあとに腹痛がある、などがあれば胃腸炎よりは便秘症の可能性を考えます。離乳食への移行期やトイレトレーニングの時期に便秘になりやすいとされています。
登校・登園前に排便する時間をしっかり作る、食事や水分をしっかりとる、食事は食物繊維の多いものを摂るように心がける、などの対策があります。
生活習慣の改善でも治りにくい便秘については、
①腸管内の細菌叢(よいバイキンの生態系)の改善
②便をやわらかくする薬
③お腹の動きをよくする薬
などの薬剤療法があります。
急性虫垂炎(盲腸)
急性虫垂炎は、別名盲腸とも言われます。発熱・右下腹部痛が特徴的です。痛みが強いと前屈み歩行になったり、歩くと響いたりします。
どういうところが胃腸炎とは違うの??
Alvaradoさんが1986年に提唱した、急性虫垂炎かどうか判断するためのスコアがあります。症状や血液検査所見の8項目からなります。
評価項目 | 点数 |
---|---|
(右下腹部への)痛みの移動 | 1点 |
食思不振 | 1点 |
悪心・嘔吐 | 1点 |
右下腹部痛 | 2点 |
反跳痛 | 1点 |
37.3℃以上の発熱 | 1点 |
10000/μL以上の白血球数上昇 | 2点 |
好中球分画70%以上の左方移動 | 1点 |
以上の合計10点のうち、7点以上あると急性虫垂炎っぽいという判定になります。ご家庭でわかりやすいのは1の痛みの移動や4の右下腹部痛あたりが特徴でわかりやすいかと思います。6のお熱に関しては胃腸炎でも熱はあることはあるので紛らわしいですが、重要なポイントの一つです。
診断は、採血、超音波、造影CTなどで行います。超音波で十分わかることもありますが、虫垂自体が体の深いところにあって超音波でうまく描出できなかったりすると、CTで最終的に判断します。
治療は、内科的治療と外科的治療があります。どちらを選ぶかは医師の判断と患者さんのご希望を総合的に合わせて考えていくことになります。
内科的治療
基本的には入院の上、抗菌薬を投与します。腸管を休めるために絶食にして、その分点滴から水分を補います。お腹の痛みが落ち着いたらおかゆなど消化に良いものから少しずつ食事を再開します。順調であれば一週間程度の入院で退院になります。
外科的治療
虫垂を手術で切除します。開腹手術でもお腹の傷は数センチ程度です。腹腔鏡手術をおこなっている施設もあります。手術後は絶食・点滴を行い、お腹が動き始めたらご飯を再開します。順調であれば5〜7日で退院できることが多いです。
アレルギー性紫斑病
両足に発疹(紫斑;しはん)があり腹痛を伴っていると、「アレルギー性紫斑病」のことがあります。
なにそれ??
アレルギー性紫斑病とは、IgA血管炎とも呼ばれていて、なんらかの原因で血管の炎症が起こることで生じます。血管の炎症が皮膚を通して見えると、紫斑(紫〜赤色がかった発疹)としてみえます。また腸管(十二指腸)の血管の炎症がおきると、腸管がむくんで腹痛・血便が生じます。
胃腸炎・便秘症・急性虫垂炎に比べると頻度は少なく、聞きなれない疾患だと思いますので自分で判断はせずに、腹痛があるときにもし足に発疹があれば医師に申し出てもらえればと思います。
まとめ
腹痛の原因の多くは、胃腸炎もしくは便秘症であり、対症療法がメインになることが多いです。ただし上に上げた疾患やそれ以外にもさまざまな原因があり、痛みが強い・高熱を伴う・足に発疹があるなど、腹痛以外の症状がある場合は医療機関にかかり、適切な対応をあおぐようにしてください。
この記事を書いた医師
望月 優暁
Masaaki Mochizuki
日本小児科学会 小児科専門医
はまっここどもクリニック 院長
2015年横浜市立大学医学部医学科卒業、横浜市立市民病院、藤沢市民病院、横浜市立大学附属病院、静岡県立こども病院等で小児医療に携わり、2023年に横浜市都筑区に「はまっここどもクリニック」を開院。